家にいるアンに電話をしたのは、その時点だ。起こった出来事を彼女に話した。そして、私がその男は存在しなかったと言ったとしても、電話をした時点ではその男の存在を確信していたことを思い出させてほしい、と彼女に頼んだ。
私は昔からかなり不思議な体験をしてきたので、心は現実の想像力に当てはめられないものは受け入れない、ということがわかっていた。そして、この男は間違いなく想定外だった。私は何度も彼を否定するだろうことは分かっていたし、ついでに言えば、今でも否定している。彼が私よりもはるかに科学に詳しく、そしていくつかの問題では、当時の誰よりも科学に詳しかった、ということだけが理由だとしても、彼の存在を頭では理解できる。
長年にわたり、アンは自分の任務から決してぶれることはなかった。私は会話を文字に起こすことを何度も諦めた。その都度、彼女は私に「電話したことを思い出して」と言った。アンは私よりも私の体験が本当だと信じている。そして、彼女の信念がなければ、率直に言って、それらを全く書いていなかっただろうし、間違いなくこれを書いていなかっただろう。
彼の肉体は現実のものだったのか、と私が感じ続けている葛藤は、長年に及ぶ接近遭遇体験をふり返った時の感じに似ている。
体験が夢や空想のように思える、ということではなく、実際そうではないが、それらが本当であってほしくない、ということだ。驚異的な知識を持った生物がここにいるが、私たちとは間接的にしか交流しないようにしている、と思いたくはない。
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