彼は去る時に、私に白い液体を飲むように言った。私がこれに同意したと言うと、異様に思われるだろうことはわかっている。しかし、その時点では、以前にそうしたことをよく記憶していた。私は以前に二度、彼に会っていることを思い出した。事実、その時の会話で覚えているごくわずかな内容が、私という存在の性格の一部となるきっかけになっている。私の思考、私の信念、私にとって人生の中で有意義で重要なものの多くは、それらに由来する。それなのに、それらを時々にしか思い出すことができない。その上、最小限の断片でしか覚えていない。言った単語、顔の表情、その瞬間のちょっとした匂いなどだ。
この薬物を飲んだ後は、翌朝まで何も思い出さない。目を覚ますと、私はすぐに三つのことをした。まず、メモを探した。それらは、ベッドの横のテーブルの上の、私が置いたところにあった。それから、おそらくグラスの1つの底に、白い液体が少し残っているだろう、と考えて、バスルームに行った。しかし、どのグラスも綺麗だった。その後、私は妻に電話をした。
私は彼女に話したいことがあり、急を要すると思えた。彼女が電話に出るや否や、私はビジターについて詳しく話をした。それから、私の口から思いがけない言葉がついて出た。「彼は現実のものではなかったと思う、と私があなたに言う日が来るだろう。彼が現実のものであったことを、決して私に忘れさせないでほしい。」
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