彼は私の質問に答えた。「あなたたちは地面に繫がれている」、と彼は言った。彼の言葉には、思いのほか力強い余韻があった。おそらく、彼の話し方が関係しているのだろう。超精密な話し方、全く気兼ねしない口調、でも、聞いた瞬間にそれらは真実なんてものではなくて、尋常ではない真実に思えた。私は、すさまじい緊急性を感じた。つまり、地球は刑務所で、私たちは囚人だと。
私は普段の自分に戻ろうとし、まるで、これが普通の出会いかのような、ふりを続けた。彼は、少し頭がおかしいファンで、真夜中に私に押し入るくらいずうずうしいのだ。わかった、彼に調子を合わせよう。「すみません?」と私は尋ねた。とにかく、この「地面に繫がれている」という、おかしな発言はどういう意味? これはどういうナンセンス?
彼は「私は善人を代表して、ここにいる。少し時間をください」と言った。
「善」という言葉、彼の言葉の言い方が、感情の詰まった水素爆弾のように、私の心の中で炸裂した。単に口調ではなく、言葉を発した時に彼が見せた顔つきだった。とても激しくて、全く申し分のない愛情表現だったので、私はただ息をのんだ。
私はとりこになった。これは決して普通の会話ではないだろう、と。私はイエローパッドをとり出し、メモをとり始めた。そして、そのようにしたことを、今では神に感謝している。なぜなら、彼の話した考えの多くは、息をのむほど目新しく、私の知性の程度を超えて展開したからだ。そのため、正確に覚えておくことは極めて難しいことが後でわかるだろう、と。メモは詳しくはなく、ほとんど関連すらないように見えるが、彼の主要な記憶しにくい思考の多くを思い出すのに役立つ語句となった。
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