その日は土曜日の朝で、出版社の広報担当者だけが、私と少しだけ一緒にいた。私はその出来事の話を彼女に持ちかけるすべを知らず、黙っていた。2,3週間たってから私は彼女に電話をして、ビジターの話をするつもりだった。そんな男は少しも見なかった、と彼女は言うであろうし、私の知っているトロントの他の多くの人も同じだろう。でも、それは終わりではないだろうし、完全に終わりというわけではないだろう。この男を探し求めて、奇妙な道を下りて行くことになるだろう。
飛行機でくつろいでいる時に、私は真剣に考える機会があった。(アメリカの)北部が真下で静かに去っていくのを眺めた。ニューヨークに戻るような日々はなくなった。私たちは今、謎のグループから嫌がらせや何ともいえない脅しを受けていて、ほとんどさすらいの身であった。金融上の多大な損失と、多くの苦難があった。ニューヨーク州北部の森にある最愛の山小屋を失ってしまった。ほとんどの接近遭遇体験が、その山小屋で行われた。しかし、今はこれを持っていた。少なくとも、これを持っていた。
私はいつもの自信を感じた。どうしてあの驚くべき会話の一言でも忘れることができようか? とにかく、私にはメモがあった。でも、これはすべて錯覚であることもわかっていた。数多くの極度に奇妙な体験を同じようにしていなければ、言われたことの多くを、すぐに失っていたかもしれない。しかし、それを正確に思い出すことが困難であろうことは分かっていた。会話を転写して発注するのに、6ヶ月ほどかかると見積もっていた。それが実際どれほど困難なことか、夢にも思わなかった。元の会話の本当の価値をさらに認めるようになって、これを編集するのに数年かかった。
飛行機で帰っている時に、彼が誰だったのか不思議に思った。もしかしたらそうなったかもしれないことを、思案した。彼に襲いかかり縛りつけ、警察を呼んでいたら、どうなっただろう? あるいは、私が白い液体を飲まず、それどころか、彼の後について行けば? あるいは、カメラを持っていて、写真を撮っていれば?
彼は誰だったのか?
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